伊藤 滋 先生

都市再生戦略チーム座長

伊藤 滋先生

早稲田大学教授
慶應義塾大学大学院客員教授

学歴

昭和30年 3月 東京大学農学部林学科卒業
昭和32年 3月 東京大学工学部建築学科卒業
昭和37年 3月 東京大学大学院工学系研究科博士課程建築学専攻修了工学博士

略歴

昭和30-40年 MIT・ハーバード大学共同都市研究所客員研究員
昭和40年 11月 東京大学工学部都市工学科助教授
昭和56年 7月 同 上  都市工学科教授
平成 4年 4月 慶應義塾大学環境情報学部教授
平成 4年 5月 東京大学名誉教授
平成 6年 4月 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授
平成12年 4月 同 上  客員教授
平成13年 4月 早稲田大学理工学部教授
平成14年 4月 早稲田大学教授

専門

都市防災論、国土及び都市計画

主な役職

(NPO)日本都市計画家協会会長

主な設計計画

千里ニュータウン中央地区センター設計 昭和38年
山形市都市基本計画(三浦記念賞受賞) 昭和42年
浦安地区住宅地基本設計 昭和53年

主な著書

『提言・都市創造』 晶文社 平成8年
『人間・都市・未来を考える』 PHP研究所 平成9年
『市民参加の都市計画』 早稲田大学出版会 平成9年
『東京のグランドデザイン』 慶應大学出版会 平成12年
『東京育ちの東京論』 PHP研究所 平成14年

伊藤滋 先生 首相官邸メールマガジンから抜粋
建物に屋根をかけよう(都市再生戦略チーム座長 伊藤滋)

参)小泉内閣メールマガジン 第129号 2004/02/19発行

今回はコンクリートの建物に屋根をかける話しをします。皆さん高い建物 に登ってを見ますと、私達の町が本当に雑然と薄汚いことに驚かれると思います。特にマンションや商店街のオフィスビルの屋上は空調機や水槽・広告塔が置かれ、ひどい所ではゴミ袋や建物の廃材が放置されています。建築士や工務店は建物の出入口や四周の壁面のデザインには気を使いますが屋上には無関心なのです。

しかし高層ビルが当たり前になった現在、都市を美しくするためには、高いところから見た都市景観がとても大切になってきました。ヨーロッパの街が美しいのは市街地の建物に屋根をつける習慣があるからです。パリの街、 ロンドンの街が美しいのは、普通の街の建物に屋根があるからです。

我国でも関西に行きますと、屋根をかけているマンションが幾つかあります。とても品が良く周囲に配慮している建築士の心構えが伝わってきます。屋根をかければ、みにくい屋上の装置が隠されるだけでなく、夏の熱い日照から建物を守ります。

湿度が高く多雨の我国で、建物が汚れず、雨漏りを防ぐためにも屋根は必要です。屋根に太陽光発電パネルをつけてもよいでしょう。コンクリートの建物に屋根がかかれば、日本の都市景観もモザイク的な美しさを取り戻します。かって、江戸の街が美しかったと外国人から言われたのは、どの建物にも銀色の瓦屋根がのっていて統一された街並みであったからです。

屋根をかけるのにはそれ程の費用はかかりません。工事費総額3億円のマンションで、工事費の1%、300万円位あれば充分です。小さい商店街の雑居ビルならば100万円もかかりません。半額は国や市役所が補助をしてもよいのです。まず隗より始めよで、役所の建物には全て屋根をかけましょう。

オープンカフェをひろめよう(都市再生戦略チーム座長 伊藤滋)

参)小泉内閣メールマガジン 第108号 2003/09/04発行

オープンカフェを知っていますか? それは建物の外側の庭や歩道に客席を設けた喫茶店です。欧米の都市ではどこにでもあります。最も象徴的なのは、パリのシャンゼリゼ通りです。ドイツでは都市の中心にある公共広場に沢山のオープンカフェが並んでいます。とても華やかです。日本でも最近散見されるようになりました。しかし日本の場合、全てが民間の敷地をつかっています。道路は利用していません。

私は歩道の一部を使ったオープンカフェが日本でもたくさんできて欲しいと思っています。最近は大都市だけでなく、地方都市でも広い歩道ができてきました。4mから6m位の幅員の歩道です。その半分位はオープンカフェに使っても、歩行者の通行のさまたげにならない場所があります。東京で言えば、銀座通りや表参道です。大阪では御堂筋、札幌では駅前の中央通りなどです。特に街角の歩道の広い部分はオープンカフェに最高です。

オープンカフェは歩道を賑やかにするだけではなく、通りに面した街全体に活気を与えます。また、お店が窓と出入口で仕切られた密室空間ではありませんから、強盗が入っても歩道上の人達がすぐ気付きますから安全です。そして役所は道路使用料を徴収することもできます。

電柱がない緑陰道路の巾広な歩道に、洒落たオープンカフェがあり、そこに色とりどりのパラソルが立てられている光景は、新しい都市文化そのものです。特に海外からの観光客が最も気に入る休憩場所です。オープンカフェに集まる人々の会話は明るくて楽しい話題です。暗くて秘密っぽい話しは店の内部の薄暗い場所で行われているのでしょう。オープンカフェは人々を元気にさせる最も手近かで安上がりな舞台です。

看板広告を撤去しましょう(都市再生戦略チーム座長 伊藤滋)

参)小泉内閣メールマガジン 第93号 2003/05/08発行

街そして郊外に看板広告が氾濫しています。企業と地主が結びついて風景を汚しているのです。郊外に行きますと、道路の交叉点にゴルフ場・レストラン・モーテルの看板が乱立しています。道路に沿って延々と大売出しの旗が並んでいます。街のはずれに行きますと、ディスカウントストアの屋上広告が建物より大きく乗っています。

これらの看板広告が折角の田園風景を台無しにしています。この野放図な看板ビジネスを許して良いのでしょうか。これをアジア的風景といって見過ごしても良いのでしょうか。誰もが一応は嘆きますが、それ以上に真剣にはなりません。

この日常的光景を皆で直して見ようと行動をするのが、21世紀型の草の根街づくりであると思っています。最近、長崎県が美しいまちづくり推進条例をつくり、交叉点付近に立並ぶゴルフ場看板を、デザインを工夫しながらひとつにまとめようとしています。とても良いことです。地方自治体にも、この看板広告の氾濫を整理しようという動きが出てきたわけです。

ヨーロッパの風景が美しいのは看板が無いからです。日本は本来簡素をむねとする美しい国でしたが、ひどいことになりました。地主が看板設置料を取っていますが、これは止めてもらいましょう。

看板広告を規制している役所は地方自治体です。ですから役所にその設置を原則禁止にする厳しい条例をつくってもらいましょう。都市計画で、住民が作成する地区計画でもその規制は可能であると思います。

皆さん、役所に出かけて、看板の整理撤去の方策を相談しませんか。その違法行為を監視するのは、地元のNPOを使えばよいのです。NPOの仕事が生まれ、地元の雇用が増えます。私達が求める観光都市とは看板の無い都市です。看板の無い田園風景にかこまれて老後を送るのが私の夢です。

草の根「街づくり」を拡げよう(都市再生戦略チーム座長 伊藤滋)

参)小泉内閣メールマガジン 第84号 2003/02/27発行

都市再生の重要な分野に、草の根「街づくり」があります。都市再生本部は昨年10月4日「全国都市再生のための緊急措置~稚内から石垣まで~」のテーマを設定しました。これは、巨大都市を対象とした都市計画に比べれば小さな「街づくり」です。身のまわりにある不便や不快・不安をなくし、地域経済を元気にする手段を皆で探し造りあげようとするものです。

小さいところでは、ブロック塀を生垣や金網塀に変える住民協定から、大きくなると、地方都市の中心商店街の復興や私鉄駅に小さな駅前広場を建設することまで、その内容は多彩です。またこのようなハードな事業だけでなく、青少年非行を防止する街の見廻りといったソフトな仕事も、街づくりには含まれます。

最近、街づくりを目的とするNPOが次々と設立されています。そこには、元気な定年後の男性が集まってきています。そして若い人達と一緒になって街づくりの仕事を探しています。

街づくりのNPOとして、八王子のフュージョン長池は、有名です。フュージョン長池は八王子市がこれまで直営していた多摩ニュータウンにある集会施設の維持管理を引き受けました。そして維持管理費を3割減らし、利用客を3割増やす事に成功しました。

富永事務局長は商社に勤めていた時より給料が3割減ったそうですが、今の方がとても生き甲斐があると言っていました。大事なことはこのNPOがあったことで高齢者や中年女性の雇用が増えたことです。

草の根「街づくり」が全国で多数展開されれば、その雇用と経済効果は無視できません。政府がこの街づくりを小さな事業費で支援すれば、より多くの民間投資を引き出すことも可能です。皆さん是非、草の根「街づくり」に参加してください。

緑陰道路を造ろう(都市再生戦略チーム座長 伊藤滋)

参)小泉内閣メールマガジン第80号 2003/01/30発行

昨年の秋、ヨーロッパの都市をいくつか訪問しました。そして街路樹の大きさ、並木通りの緑の豊かさに改めて強い感銘を受けました。ヨーロッパの街路樹はのびやかに育ち、歩道に濃い緑の陰をおとしていました。歩道には涼しい風が流れていました。木の高さは建物の4階位までありました。剪定をしていないからです。建物にも緑の陰が落ち、直射日光をふせいでいました。

それに比べて日本の都市の街路樹は何と貧弱なことでしょう。東京の表参道や仙台の定禅寺通りのような、例外はあるとしても、大部分の街路樹は剪定をされて盆栽風にまとめられています。樹木の間隔も広く、歩道を木陰でおおう役割はまったく果たしていません。

ひどい場合には、9月になるともう枝や葉がばっさりと切り落とされてしまうのです。緑陰を利用して道路表面の温度を下げるという配慮は全くないのです。ヒートアイランドを防ぐ機能は無視されています。

さらに地方都市に行きますと、街路樹には度重なる剪定のために、枝先には醜い肉腫のようなこぶが出来ています。並木通りは醜くて美しくないのです。この無残な姿の街路樹は、交通信号を見やすくするための結果だそうです。それならば樹木の下枝をかりこみ見通しをよくし、幹を上に早く育ててゆけばよいのではないでしょうか。

ヨーロッパを見習い、剪定を止めて木を大きく育てましょう。歩道を緑陰で覆う美しい並木道を都市の中に沢山造ろうではありませんか。それにしても役人は何を考えているのでしょうか、不思議です。

街から電線を無くそう。(都市再生戦略チーム座長 伊藤滋)

参)小泉内閣メールマガジン 第75号 2002/12/19発行

これから暫くの間、都市再生のコラムを担当させてもらいます。都市再生は皆さんの街を良くすることです。身近なところから始めましょう。

今回の話題は、日本の都市の空から電線を追放することです。つまり電柱を取除き電線を地下に埋め込むことです。それも短い期間に思いきって。日本の街を醜くしている大きな原因は電柱と電線です。この事は以前からずっと言われていました。

大都市の表通りは電柱がなくなって気持ちがよくなりました。それでも電柱は街あらゆるところにあります。せまい道から電柱がなくなったら、気持ちがはればれします。

電力会社は電線を地下に埋めるのはお金がかかると言っています。それならば電線は電力の配電ですから、経産省が担当する燃料関係諸税、道路に立つ電柱国交省の道路特定財源から税金を充当して良いのではありませんか。慣習になっている電力会社と行政のもたれ合いを無くすことも都市再生の目的のひとつです。

電柱と電線がはびこっている都市は先進国家の都市ではありません。それに電線を地下に埋設する方が地震の時にケーブルが破損しなくて安全です。阪神・淡路大震災の時に分かりました。

それに私の類推ですが、電線の地中化はそれ程難しい工事ではありません。地方の中小の工事業者に発注することができます。これは地域社会、特に地方都市では、中高年男性の仕事になります。雇用が増えます。小さい工事会社の工事代金は地元の店屋さんにまわり消費を刺激します。是非電線の地中化を支援して下さい。街が美しくなります。