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第7回瓦ブログ

歴まち保存研究部会の活動報告:まちなみ視察

2023年9月13日(水)、歴まち保存研究部会のメンバーとして、三重県と滋賀県の歴史的な町並みを視察してきました。

今回の視察先は、三重県いなべ市北勢町阿下喜と滋賀県五箇荘金堂町の2か所です。それぞれに見どころがたくさんありましたが、ここでは特に印象に残った「桐林館」という建物について紹介したいと思います。

「桐林館」は、いなべ市北勢町阿下喜にある木造平屋建ての建築物で、国登録有形文化財に指定されています。この建物は、1937年に竣工した旧阿下喜小学校の校舎を移築保存したもので、戦前の木造小学校の姿を今に伝える貴重な遺産です。

建物は南面中央に切妻造りの玄関を構え、屋根の中央に塔屋を載せ、左右にドーマー窓を飾る外観です。玄関上の切妻屋根に使用されている青色の瓦は移築前の瓦を再現しており、当時にしてはとてもモダンな建築物であったことがわかります。瓦は陶器製のフレンチ瓦でしょうか。塔屋と左右に設けられたドーマーの屋根は銅板葺きで、高級感があります。

外壁は腰を下見板張り(※1)とし、小屋はキングポストトラス(※2)を組んでいます。外観や内部造作とも旧態をよくとどめており、当時の教育環境や文化を感じさせます。

下見板張(※1)

板等の上下がお互いに少しずつ重なり合うように、横方向に張ること。

キングポストトラス(※2)

トラスの基本形式の一つで, 山形トラスの中央に真束(しんづか)と呼ばれる垂直材をもつトラス

桐林館という名称は、当初の阿下喜小学校の校庭に多数植えられていた桐をモチーフにしています。桐林館では、当時の普通教室と校長室を復元し展示しています。普通教室は、当時在勤していた元教員と卒業児童からの情報に基づき復元されました。

校長室の天井には井桁に格子を組む「格天井」が採用されており、他の教室とは違った意匠を凝らしています。普通教室の机・椅子については、現在の阿下喜小学校に保管されていたものを基に形状・材質を忠実に復元したものだそうです

教室内に展示されている番傘は、阿下喜小学校昭和38年の入学児童が使用していたものだそうです。当時の置き傘は、写真 のように教室内の壁に掛けて保管されていたようです。

桐林館は、戦前の木造小学校の姿を今に伝える貴重な建造物です。歴史的な町並みとともに、当時の教育や文化に触れることができます。ぜひ一度訪れてみてください。

国登録有形文化財(建造物) 登録年月日:2014年10月7日

桐林館(旧阿下喜小学校校舎)

とうりんかん(きゅうあげきしょうがっこうこうしゃ)

三重県いなべ市北勢町阿下喜字二俣1974他

昭和前/1937/1983移築

木造平屋建、瓦葺、建築面積345㎡、塔屋付